漫画を描くには、多くのステップがあります。この記事では、Clip Studio Paint Eを使って、ネーム、枠線、下描き、セリフ、ペン入れ、背景、描き文字、べた塗り、トーンの順番で描く方法を解説します。各ステップごとに私が実際に描いた漫画の画像を元に、ポイントやコツ、注意点を紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。
目次
はじめに
今回はこちらの私が描いたとある漫画の1ページを参考にしながら解説していきます。
ちなみに左ページです。
では、さっそく順番に描き方の解説をしていきます。
1. ネーム(ストーリーボード)
ネームは物語の基盤となるストーリーボードで、全体の流れや構成を決める重要な段階です。
ネームの段階ではほとんど落描きのようなクオリティーですが、これが最も重要な作業で、ネームができたら5割は完成したと思ってもいいぐらいです。
ネームとは簡単に言えば「設計図」です。
どこにどういうアングルで、どういう人物・物・背景を描くかを決める作業工程ですので、セリフも吹き出しの位置も決めます。
上の画像ではセリフが入っていませんが、気にしないでください。
ポイント
- 物語の流れとコマ割りを決定する段階です。簡単なスケッチで描きます。
- 大まかな構図を決め、キャラクターの配置やセリフの位置を考えます。
- シンプルに描くことを意識しましょう。詳細に描きすぎると、後の工程で手直しが増えます。
- 各コマのバランスとページ全体のレイアウトを考慮します。
注意点
- ネームの段階でストーリーが伝わるかどうかを確認しましょう。
- 後で変更が容易なように、ラフで描きます。
2. 枠線(フレーム)
枠線はコマを区切るための線で、ページの構成を決定し、読者の視線を自然に誘導する役割を果たします。
ネームを元に枠線を引きました。
左ページなので、右側は基本枠(内枠)までです。全て基本枠(内枠)まででも構いません。
下の画像はネームを隠した場合の枠線のみのページです。
内側裁ち切り線まで枠線を引いていますが、厳密に言うとこれは間違いです。
外側の裁ち切り線まで枠線を引くのが正解です。
そうしないと製本になった時に枠線が不自然に入っている可能性があります。
ポイント
- コマを区切るための枠線を引きます。これはページの構成をはっきりさせる重要なステップです。
- Clip Studio Paintの「素材→漫画素材→コマ割りテンプレート」で簡単に枠線を引くことができます。
- コマのサイズや形状を工夫して、読み手にとって視覚的に魅力的なページを作成します。
右ページはドカンとインパクトのある絵を持ってくるのが漫画の作り方のセオリーで、逆に左ページは次のページをめくりたくなるようなドキドキ感を演出するのが漫画の作り方です。
今回は左ページなのでセリフも「あの…」というコマで終わっています。
そうすることで、次のページをめくりたくなる演出ができます。そして、次のページをめくった時、右ページにインパクトのある一枚絵を持ってきたりします。
これが漫画の構造です。
全ての右ページと左ページにこのような作り方をしていけるように努力しましょう。
注意点
- コマ割りが複雑すぎると読みづらくなるので、シンプルさを保つことも重要です。
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3. 下描き(ラフスケッチ)
下描きはペン入れ前の詳細なガイドとなるスケッチで、キャラクターや背景の位置や形を決めます。
ポイント
- 各コマにキャラクターや背景のラフスケッチを描きます。
- ペン入れ前のガイドとなる重要なステップです。
- 重要なシーンやキャラクターの表情に注力しましょう。
注意点
- ラフスケッチは詳細に描きすぎないようにし、ペン入れで修正できる余地を残します。
4. セリフ(スピーチバブル)
セリフはキャラクターの言葉を伝える重要な要素で、バブルに入れて配置します。
ネームの段階で決めていたセリフを吹き出しと一緒に活字で書きました。
Clip Studio Paintを使えば吹き出しも簡単に作れますし、自在に変形も可能です。
ポイント
- 各キャラクターのセリフをバブルに入れて配置します。
- セリフの位置とバブルの形状が読みやすさに影響します。
- セリフがコマの中で自然に見えるように配置します。
- Clip Studio Paintの「スピーチバブルツール」を使うと簡単に作成できます。
注意点
- セリフがキャラクターの顔や重要なシーンを隠さないように注意します。
5. ペン入れ(インキング)
ペン入れはラフスケッチを元に、キャラクターや背景を細かく描き込み、清書するステップです。
下描きの時にはYシャツだったのが、ペン入れ時にはTシャツに変更しています。
ペン入れ時、下描きを青色レイヤーにしておくとペン入れがしやすいです。また透明度を下げることで上のようにペン入れしやすい環境を作ります。
青色レイヤーはレイヤープロパティから以下のように設定します。
ポイント
- ラフスケッチを元に、キャラクターや背景を細かく描き込みます。
- Clip Studio Paintの「ペンツール」を使って、滑らかな線を引きます。
- 線の太さや濃淡を使い分けて、立体感や動きを表現します。(輪郭線は太くなど…)
- クリンナップ(クリーンアップ)を意識して、線の不要な部分を削除します。
注意点
- 細部にこだわりすぎると時間がかかるので、適度なところで切り上げることが重要です。
6. べた塗り(ブラックフィリング)
べた塗りは影や黒い部分を塗りつぶし、コントラストを強めて絵を引き締めます。
ベタ塗りはバケツツールなどを使って行います。
この漫画ではわかりづらいのですが、ついでにハイライトも入れています。
ポイント
- 影や黒い部分を塗りつぶします。これにより、コントラストが強まり、絵が引き締まります。
- Clip Studio Paintの「塗りつぶしツール」を使うと効率的です。
- 光源を意識して、どの部分を黒く塗るか決めます。
- 効果的な影の付け方を工夫しましょう。
注意点
- 過剰なべた塗りは全体のバランスを崩すので、適度に行います。
7. 背景
背景は、物語の世界観やシーンの雰囲気を伝える重要な要素です。
今回は背景を描くのが1コマのみだったのでこちらのコマを拡大してみました。
背景は遠近法などが表現されると、イイ感じになります。
Clip Studio Paintには透視図法のヘルプをしてくれるツールも存在します。
ポイント
- シーン設定:背景はシーンの場所や時間を視覚的に伝える役割を持っています。ストーリーに合った適切な背景を選びましょう。
- 奥行きとパースペクティブ:背景に奥行き感を持たせることで、画面が立体的に見えます。パースペクティブ(遠近法)を意識して描きます。
- 詳細とシンプルさのバランス:背景の詳細さはシーンによって異なります。主要なシーンでは詳細に描き込み、その他のシーンではシンプルにすることで、視覚的なメリハリをつけます。
- レイヤーを活用する:Clip Studio Paintのレイヤー機能を活用して、前景、中景、背景を分けて描きます。これにより、後からの修正や調整が容易になります。
- 素材の利用:背景素材やブラシを活用すると、時間を節約できます。Clip Studio Paintの素材ライブラリを活用して、効果的な背景を作成しましょう。
- 光と影の使い方:光源を意識して、光と影を適切に配置することで、背景にリアリティと深みを加えます。
注意点
- 過剰な詳細描写を避ける:背景が詳細すぎると、キャラクターが目立たなくなることがあります。キャラクターを引き立てるために、背景の描写を適度に抑えることも重要です。
- 一貫性を保つ:シーンごとの背景のスタイルやパースペクティブ(遠近法)が一致しているか確認しましょう。一貫性がないと、読者がシーンの繋がりを理解しづらくなります。
- 背景の意味:背景に不要な要素を入れすぎないように注意します。必要な情報だけを盛り込み、読者に伝えたいメッセージを明確にしましょう。
背景の例
- 都市の風景
- ポイント:ビルや道路などの都市の背景は、シーンの現代感やスケール感を強調します。
- コツ:パースペクティブをしっかりと設定し、遠近感を出します。ビルの窓や街灯など、ディテールに気を配りましょう。
- 注意点:あまりにも詳細に描き込みすぎると、キャラクターが埋もれてしまいます。重要な部分を強調し、背景を控えめにするバランスを見極めます。
- 自然の風景
- ポイント:森や川、山などの自然の背景は、シーンの静けさや広がりを表現します。
- コツ:木々の葉や川の流れをブラシで描くと効率的です。光と影の使い方を工夫し、リアリティを出します。
- 注意点:自然の背景は色やトーンが単調になりやすいので、異なるトーンや色合いを使って変化をつけます。
- 室内の風景
- ポイント:室内の背景は、シーンの親密さやキャラクターの生活感を伝えます。
- コツ:家具や小物を配置し、キャラクターの性格やストーリーのヒントを示す要素を取り入れます。
- 注意点:室内のパースペクティブが崩れると、違和感が生じやすいので注意が必要です。
8. 描き文字(擬音・効果音)
描き文字(擬音や効果音)は、漫画における重要な要素の一つで、キャラクターの感情やシーンの臨場感を高めます。
ここでは「ドキドキ」や「フワ」といった描き文字を加えました。
袋文字にして、外側を白色にしています。
描き文字もClip Studio Paintの素材にたくさんあるので活用したり、応用したりできます。
ポイント
- 表現の強化:描き文字は、アクションシーンや感情表現を強調するために使用されます。シーンに合わせた適切な描き文字を選びましょう。
- デザイン:描き文字のフォントやスタイルを工夫して、シーンの雰囲気に合ったデザインを作成します。Clip Studio Paintの「描き文字ツール」を活用すると便利です。
- レイアウト:描き文字の配置は、ページ全体のバランスに影響します。キャラクターや背景と調和するように配置しましょう。
- バリエーション:同じ擬音でも、シーンの雰囲気に応じて異なるフォントやスタイルを使い分けると効果的です。たとえば、緊迫感のあるシーンでは太くて鋭い文字、穏やかなシーンでは柔らかい文字を使います。
- サイズと位置:描き文字のサイズや位置を工夫して、視線誘導を意識します。重要な場面では大きく、目立たせたい部分に配置します。
- カスタマイズ:既存のフォントだけでなく、自分で手描きの文字を加えることで、より個性的な表現が可能になります。手描きの文字は、独自の味を出すのに役立ちます。
注意点
- 過剰な使用を避ける:描き文字を多用しすぎると、ページが煩雑になり、読み手が混乱する原因になります。適度に使用することを心がけましょう。
- 視覚的ノイズ:描き文字がキャラクターや重要なシーンを隠さないように配置することが重要です。視覚的なノイズを避けるために、バランスを考えて配置します。
- 読みやすさ:描き文字が読みにくいと効果が半減します。特に手描きの場合は、読みやすさに注意して描きましょう。
描き文字の例
- アクションシーン
- ポイント:動きのあるシーンでは、大きくて力強い描き文字が効果的です。
- コツ:例えば「ドーン」や「バキッ」など、衝撃を表現する文字を太く、鋭く描きます。
- 注意点:背景とのコントラストを考え、文字がしっかりと目立つようにします。
- 感情表現
- ポイント:キャラクターの感情を強調するために、擬音を使用します。
- コツ:「ドキドキ」や「ワクワク」など、感情を表現する文字は柔らかく、曲線を多用します。
- 注意点:感情表現の文字はキャラクターの顔の近くに配置し、表情と一緒に見せるようにします。
- 環境音
- ポイント:環境音を描くことでシーンの臨場感を高めます。
- コツ:「シーン」や「ザーザー」など、環境音を背景に溶け込むように描きます。
- 注意点:環境音の文字は背景と調和するようにデザインし、目立ちすぎないようにします。
9. トーン
トーンはグレーのパターンを使って、キャラクターや背景に質感や深みを加えます。
ここでは髪の毛やソファにトーンを貼って色や濃さを表現しています。
ポイント
- グレーのトーンを使って、キャラクターや背景に質感や深みを加えます。
- Clip Studio Paintの「トーンツール」を使って、簡単にトーンを貼ることができます。
- トーンの種類や密度を使い分けて、多様な表現を試みます。
- レイヤーを分けて作業することで、後から修正しやすくなります。
注意点
- トーンを使いすぎると画面がごちゃごちゃするので、バランスを見ながら調整します。
最後に、製本になった場合にグレーは表現されないので、以下のようにレイヤープロパティでグレーをトーンに変更します。
最初からトーンを使ってもいいです。
トーン線数がトーンの濃さを現します。黒に近いグレーにしていた場合トーン線数は高くなります。
網の設定でトーンの種類を変更できます。ここでは一番ベタな「円」にしています。
以上が、Clip Studio Paintを使った漫画の描き方の基本的な流れです。
それぞれのステップで紹介したポイントやコツ、注意点を参考にしながら、自分のスタイルに合った方法を見つけてください。
素晴らしい漫画が描けることを願っています!
私が初めて描いた漫画はこちら→https://note.com/ren777/n/nfc6e94f9b621
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